動脈硬化と脂肪酸の食べ方
脂肪酸は、身体のエネルギー源としての役割と、身体の組織を正常に機能させる役割を持っています。オメガ3系にはα-リノレン酸、EPA/DHAが、オメガ6系にはリノ-ル酸が、オメガ9系にはオレイン酸があります。
オメガ3系
体内でつくられず、食物から摂る必要がある必須脂肪酸です。アマニ油、えごま油、魚油、しそ油に多く含まれます。熱に弱く、酸化されやすい性質をもっているため、加熱調理には適していません。オメガ3脂肪酸の1日に必要な量は、女性(18歳以上)が1.62~1.99g/日(妊婦1.48g/日、授乳婦1.81g/日)、男性(18歳以上)が1.92~2.23g/日( 厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」より)。1日あたりの摂取目安量は、小さじ約1杯です。
オメガ3系は、血液中の中性脂肪を減らして血液をサラサラにし、血中血栓ができるのを防ぎ、不整脈の発生や動脈硬化を防止する作用があると言われています。魚油のEPA/DHAは治療薬にも採用され、保険診療での治療投薬可能です。
オメガ6系
体内でつくられず、食物から摂る必要がある必須脂肪酸です。体内でγ-リノレン酸やアラキドン酸(AA)に変換されていきます。サラダ油(グレープシードオイル、コーン油など)、ごま油、べに花油。加工食品にも多く含まれます。実は摂り過ぎるとLDL(悪玉)コレステロールだけでなく、HDL(善玉)コレステロールも減少させてしまいます。外食や加工食品に多く含まれている場合もあるので、気がつかない内に過剰摂取してしまっていることもあります。
オメガ9系
体内でつくれる脂肪酸です。酸化しにくいので扱いやすく、日常的に取り入れやすい成分です。オリーブオイル/ひまわり油/べに花油/なたね油(キャノーラ油)/マカダミアナッツオイル、米油などに多く含まれます。オリーブオイルをサラダ油の代わりに使うことで、オメガ6の摂取を抑えながら、オメガ9を摂取できます。酸化に強いオレイン酸はコレステロール値上昇を防ぐだけではなく、肌の乾燥も防ぎ、活性酸素の生成を抑えてシミやシワなどの予防にも役立ちます。
EPA/AA比について。オメガ3α-リノレン酸とオメガ6リノレン酸は、摂取のバランスがとても大切です。この2つの必須脂肪酸の変換には同じ酵素が使われるため競合してしまうからです。片方が多くなってしまうと、もう一方の変換が抑制されてしまいます。
脂質は、たんぱく質・炭水化物と並ぶ三大栄養素の一つです。「脂質」は私たちが活動するためのエネルギー源であり、細胞膜やホルモンの材料となる重要な栄養素です。適量を知ってバランスの良い食事を心がければ、油は健康な体づくりの強い味方になってくれます。
脂肪酸についてのQ&A
脂肪酸とは何ですか?
脂肪酸とは、炭素、水素、酸素の原子からなる有機化合物で、炭素鎖と末端のカルボキシル基(-COOH)で構成されています。脂肪酸はエネルギー源として利用されるだけでなく、細胞膜の構成成分やホルモンの原料としても重要です。脂肪酸には、飽和脂肪酸、単価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の3つのタイプがあります。
飽和脂肪酸とは何ですか?
飽和脂肪酸は、炭素原子がすべて単結合で結合された脂肪酸です。これにより、炭素鎖が直線的な形状を持ち、固体であることが一般的です。バターやラードなどの動物性脂肪に多く含まれますが、植物性脂肪の一部にも存在します。過剰な摂取は心血管疾患のリスクを高めるとされています。
単価不飽和脂肪酸とは何ですか?
単価不飽和脂肪酸は、炭素原子が一つの二重結合を持つ脂肪酸です。この二重結合により、炭素鎖が曲がり、液体であることが一般的です。オリーブオイルやアボカドに多く含まれ、心血管疾患のリスクを低下させる効果があります。
多価不飽和脂肪酸とは何ですか?
多価不飽和脂肪酸は、炭素原子が2つ以上の二重結合を持つ脂肪酸です。この特徴により、炭素鎖が複数の曲がりを持ち、液体であることが一般的です。オメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸が代表的で、魚やナッツに多く含まれます。健康に良い影響を与えるとされています。
オメガ3脂肪酸とは何ですか?
オメガ3脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸の一種で、炭素鎖の末端から3番目の炭素原子に二重結合がある特徴を持っています。主な種類にα-リノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)があり、特にEPAとDHAは抗炎症作用や心血管疾患の予防に役立つとされています。魚油や青魚、亜麻仁油などに含まれています。
オメガ6脂肪酸とは何ですか?
オメガ6脂肪酸は、多価不飽和脂肪酸の一種で、炭素鎖の末端から6番目の炭素原子に二重結合がある特徴を持っています。リノール酸が代表的で、大豆油やひまわり油などに含まれています。摂取量に注意が必要で、適量であれば健康に良い効果がありますが、摂りすぎると炎症を引き起こすリスクがあります。
脂肪酸の摂取量の目安はどのくらいですか?
一般的な目安として、成人の1日のエネルギー摂取量の20-35%を脂肪酸が占めることが推奨されています。また、飽和脂肪酸の摂取量はエネルギー摂取量の10%以下、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の摂取比率は1:4程度が望ましいとされています。
トランス脂肪酸とは何ですか?
トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸の一種で、炭素鎖の二重結合がトランス型(直線状)になっている脂肪酸です。天然にも少量存在しますが、工業的に製造される部分水素化油に多く含まれています。トランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増加させ、善玉コレステロールを減少させるため、心血管疾患のリスクを高めるとされています。そのため、摂取量をできるだけ少なくすることが推奨されています。
脂肪酸が提供するエネルギーはどのくらいですか?
脂肪酸は1グラムあたり約9キロカロリーのエネルギーを提供します。これは、炭水化物やタンパク質(1グラムあたり約4キロカロリー)よりも高いエネルギー密度を持っています。そのため、適量の摂取が重要です。
必須脂肪酸とは何ですか?
必須脂肪酸とは、人間の体では合成できないため、食事から摂取する必要がある脂肪酸のことです。オメガ3脂肪酸のα-リノレン酸とオメガ6脂肪酸のリノール酸が必須脂肪酸とされています。これらは細胞膜の構成成分やホルモンの原料となり、健康維持に不可欠です。
MCTオイルとは何ですか?
MCTオイルは、中鎖脂肪酸(Medium Chain Triglycerides)を主成分とするオイルです。中鎖脂肪酸は、炭素原子数が6~12個の脂肪酸で、消化・吸収が速く、エネルギーとしてすぐに利用されるため、長鎖脂肪酸よりもエネルギー供給効率が高いとされています。ココナッツオイルやパームカーネルオイルに含まれています。
脂肪酸の機能性とは何ですか?
脂肪酸の機能性とは、特定の脂肪酸が持つ健康に対する働きのことです。例えば、オメガ3脂肪酸は抗炎症作用を持ち、心血管疾患の予防に役立つとされています。また、オメガ6脂肪酸は適量であれば細胞膜の構成や免疫機能の維持に関与しています。さらに、中鎖脂肪酸はエネルギー供給効率が高く、持久力の向上や体重管理に役立つとされています。それぞれの脂肪酸の機能性を理解し、バランスよく摂取することが健康維持に重要です。
脂肪酸の摂取源にはどのような食品がありますか?
脂肪酸は動物性食品(肉、魚、卵、乳製品など)と植物性食品(ナッツ、種子、オイルなど)の両方に含まれています。ただし、飽和脂肪酸は主に動物性食品に、オメガ3脂肪酸は魚や亜麻仁油、オメガ6脂肪酸は植物油に多く含まれています。バラエティ豊かな食事でバランスよく摂取しましょう。
脂肪酸の過剰摂取はどのような影響がありますか?
脂肪酸の過剰摂取は、エネルギー摂取量の増加につながり、肥満や心血管疾患のリスクを高める可能性があります。特に、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の過剰摂取は、悪玉コレステロールが増えることで、動脈硬化や心筋梗塞のリスクが上がります。また、オメガ6脂肪酸の摂取が過剰になると、炎症反応が増加する可能性があります。
健康に良い脂肪酸の摂取方法はどのようなものがありますか?
健康に良い脂肪酸の摂取方法は、次のようなポイントに注意しましょう。まず、飽和脂肪酸の摂取を減らし、不飽和脂肪酸を中心に摂取します。オリーブオイルや魚、ナッツなどが良い選択です。次に、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の摂取比率を適切に保ち、必須脂肪酸をバランスよく摂取します。また、トランス脂肪酸は避け、中鎖脂肪酸を含むMCTオイルを摂取することも健康に良いとされています。ただし、脂肪酸の摂取は適量が大切であり、過剰な摂取は健康に悪影響を与えることがあるため、適量を守るようにしましょう。
脂肪酸とコレステロールの関係は何ですか?
脂肪酸とコレステロールは異なる化合物であり、脂肪酸が多く含まれている食品が必ずしもコレステロールが高いわけではありません。ただし、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の過剰摂取は、悪玉コレステロールを増加させることがあるため、心血管疾患のリスクを高める可能性があります。
脂肪酸はダイエットに適していますか?
脂肪酸自体はエネルギー密度が高いため、摂りすぎると肥満や健康問題の原因になることがあります。しかし、適量を摂取することで、健康維持やダイエットに役立つとされています。例えば、不飽和脂肪酸の摂取は、脂肪燃焼を促進し、体脂肪の蓄積を抑制する効果があるとされています。
脂肪酸は体に必要不可欠な栄養素ですか?
脂肪酸は体内で合成できない必須脂肪酸を含むため、摂取する必要があります。ただし、必要な量を適切に摂取することが重要であり、過剰摂取は健康に悪影響を与えることがあるため、バランスよく摂取するようにしましょう。
脂肪酸は加熱によって変化することがありますか?
脂肪酸は、加熱や酸化によって変化することがあります。特に、不飽和脂肪酸は酸化しやすく、変質しやすいため、過剰な加熱や長期間の保存に注意が必要です。また、加熱調理の際は、高温で加熱しすぎないように注意し、加熱後は早めに食べるようにしましょう。
脂肪酸はどのような形で体内に取り込まれますか?
脂肪酸は、消化器官で消化され、脂肪酸とグリセリンに分解されます。その後、脂肪酸は腸管上皮細胞に取り込まれ、リン脂質と共にキロミクロンという脂質粒子に包まれ、血液中に放出されます。血液中を循環し、各組織に到達してエネルギー源として利用されます。
脂肪酸は運動パフォーマンスにどのような影響を与えますか?
適切な量の脂肪酸は、エネルギー源として利用されるため、持久力の向上や運動パフォーマンスの改善に役立つことがあります。また、オメガ3脂肪酸は抗炎症作用を持ち、筋肉の回復を促進するとされています。
脂肪酸は脳の機能に影響を与えますか?
脂肪酸は脳の構造に欠かせない成分の一つであり、脳の正常な発達や機能に重要な役割を果たしています。特に、オメガ3脂肪酸のDHAは、脳の細胞膜の構成成分や神経伝達物質の原料として重要であり、認知機能の改善や認知症予防に役立つとされています。
脂肪酸は美肌に効果があるとされていますが、なぜでしょうか?
脂肪酸は、肌の角質層の構成成分の一部であるセラミドや、肌の保湿成分である皮脂の主要な成分である脂質の原料となるため、美肌効果があるとされています。また、オメガ3脂肪酸は、炎症を抑える効果があるため、肌荒れやニキビなどの炎症を起こしやすい肌にも効果があるとされています。さらに、脂肪酸は抗酸化作用も持ち、肌の老化を防止する効果があるとされています。
ダイエット中でも脂肪酸は摂取すべきですか?
ダイエット中でも、適切な量の脂肪酸を摂取することが重要です。脂肪酸は、エネルギー源として利用されるため、適量を摂取することで、運動パフォーマンスの向上や脂肪燃焼を促進する効果があります。また、不飽和脂肪酸は、脂肪燃焼を促進し、体脂肪の蓄積を抑制する効果があるとされています。
脂肪酸とビタミンEの関係は何ですか?
脂肪酸は酸化しやすく、ビタミンEは抗酸化作用を持つため、脂肪酸の酸化を防止する役割があります。また、ビタミンEは血液の循環を促進し、脂肪酸を各組織に運ぶ役割もあります。脂肪酸とビタミンEは相互に補完しあうため、バランスよく摂取することが健康維持に重要です。
脂肪酸の過剰摂取は、肝臓に影響を与えますか?
脂肪酸の過剰摂取は、肝臓に脂肪が蓄積する「脂肪肝」を引き起こす可能性があります。特に、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の過剰摂取は、脂肪肝を引き起こす原因となることがあります。脂肪肝は、肝臓の機能を低下させるため、健康に悪影響を与えることがあるため、適切な量を摂取するようにしましょう。
脂肪酸は血液中のコレステロール値に影響を与えますか?
脂肪酸は、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を過剰に摂取すると、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を増加させることがあります。一方、不飽和脂肪酸を摂取すると、善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増加させる効果があるため、血液中のコレステロール値を改善することができます。
脂肪酸はアレルギーの原因になることがありますか?
脂肪酸自体はアレルギーの原因になることはありませんが、脂肪酸を含む食品がアレルギーの原因になることがあります。例えば、ナッツや種子類に含まれるオメガ3脂肪酸は、アレルギーの原因物質となることがあります。アレルギー体質の人は、適量を守りつつ、摂取に注意するようにしましょう。
脂肪酸は心臓病リスクを高めるのでしょうか?
飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の過剰摂取は、悪玉コレステロールを増加させ、心臓病のリスクを高めることがあります。一方、不飽和脂肪酸を適量摂取することで、善玉コレステロールを増加させ、心臓病の予防に役立つとされています。脂肪酸の摂取量や種類によって、心臓病リスクが変化するため、バランスよく摂取するようにしましょう。
脂肪酸は妊娠中にも摂取すべきですか?
妊娠中にも、適切な量の脂肪酸を摂取することが重要です。特に、DHAは胎児の脳や神経系の発達に重要な役割を果たしており、妊娠中の女性は適切な量を摂取するようにしましょう。また、妊娠中の女性は、脂肪酸不足によって出産後のうつ病のリスクが高まることがあるため、適切な量を摂取することが望ましいとされています。ただし、過剰な摂取は胎児や母体の健康に悪影響を与える可能性があるため、バランスの良い食生活を心がけるようにしましょう。
脂肪酸の過剰摂取による健康被害はどのようなものがありますか?
脂肪酸の過剰摂取は、肥満や高血圧、心臓病、脳卒中、糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めることがあります。特に、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の過剰摂取は、悪玉コレステロールを増加させ、動脈硬化の原因となることがあります。適切な量を摂取するようにし、バランスの良い食生活を心がけましょう。
監修
おきた内科クリニック
院長 沖田 英明
日本老年医学会 老年病専門医・日本内科学会 認定内科医・日本消化器内視鏡学会専門医・日本リウマチ財団 リウマチ登録医・日本糖尿病協会 療養指導医・認知症サポート医・広島県医師会認定かかりつけ医・日本抗加齢医学会 学会員・日本喘息学会 学会員